【vol.4】生前贈与の活用
2019.05.28
生前贈与とは、贈与する人「贈与者」が生きている間に、贈与を受ける人「受贈者」に財産を贈ることです。この生前贈与には、税制面でいくつかの控除や非課税となる特例があり、生前から準備をすることで、相続税の軽減が可能です。今回は、この控除や特例について弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーが解説します。
生前贈与の方法と贈与税の計算
生前贈与とは、生きている間に財産を誰かに贈ることで、贈与者と受贈者で合意をするだけで、いつでも誰でも行うことが可能です。贈与は口約束でも成立しますが、その後の相続のトラブルをなくすためにも自筆、実印を用い、明確な日付の贈与契約書を作成することをお勧めします。
また、生前贈与をした財産は相続税の対象から外れる一方で、贈与税の対象となります。贈与税は暦年課税と呼ばれる「1月1日から12月31日まで」を一区切りとして計算するのが基本です。暦年課税における贈与税の計算方法は以下のとおりです。なお、贈与者が亡くなる3年以内に生前贈与された財産は、遺産分割や相続税の対象となりますので、ご注意ください。
※ 贈与税の計算方法
(1年間に受けた贈与額の合計-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額
一般税率や控除額は国税庁のサイトをご覧ください。なお、直系尊属(父母や祖父母など)から財産の贈与を受けた人(贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上)のその財産に係る贈与税の額は、特例税率が適用されます。
生前贈与が非課税となる控除と特例
生前贈与には、以下のような控除や特例があります。このような控除や特例をうまく活用することで、節税につなげることが可能です。
■ 基礎控除
暦年(1月1日から12月31日までを一区切りとする)における、110万円までの控除のこと。1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。
■ 配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できます。
■ 住宅取得資金の特例
住宅資金を子や孫に贈与する場合は最大3,000万円までの贈与が非課税となります。家屋の種類などにより非課税限度額が変わるため、詳細は国税庁のサイトをご覧ください。
■ 相続時精算課税の特例
不動産のように大きな財産を贈与する際、贈与者が60歳以上で、受贈者が成人であれば、2,500万円まで控除できます。超えた額は一律20%が課税されます。この制度を利用する場合、贈与した財産がすべて相続財産として計算されるため、損をする場合もあります。
など
贈与期間中に贈与者の死亡等により、非課税にならない、または相続とみなされるなど、状況により異なる場合もあります。具体的な計算は、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
タイムズサポートFPクラブ
税額控除とは
税額控除とは、所得税から直接控除ができるため、知っておきたい基礎知識です。
所得税=(収入-経費-所得控除)×税率-税額控除
■ 配当控除
配当所得がある場合に受けられます。
■ 住宅借入金等特別控除
住宅購入、改築などで借入をした場合に適用されます。
■ 住宅耐震改修特別控除
耐震改修を行った場合に受けられます。
■ 外国税額控除
外国の法令で所得税に相当する税金を支払った場合に適用されます。
■ 政党等寄附金等特別控除
政党又は政治資金団体に対して一定の寄付金を支払った場合に適用されます。
など
還付申告とは
還付申告とは、源泉徴収で納めすぎた税金を返してもらう申告のことです。確定申告は還付申告も同時に行ったことになるため、確定申告をする方は還付申告をする必要はありません。会社員は、年末調整により納税は行ったものの、会社で把握できない控除などがある場合は、自身で還付申告をすることにより納めすぎた税金が戻ってきます。還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、以下のような事象が生じた年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
・年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき
・一定要件でマイホームの取得などをして、住宅ローンがあるとき
・マイホームに特定の改修工事をしたとき
・認定住宅の新築等をしたとき
・災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
など