様々な理由から、空家は年々増加しています。しかし、空家を放置することは様々なリスクを伴う可能性があります。現在、適切な管理が行われていない空家が地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることを鑑み、政府が講じている対策も合わせて確認しましょう。
【vol.3】空家放置の現状
増え続ける空家
総務省が5年に1度行う「住宅・土地統計調査」によると、直近の2013年の調査結果では、空家の数が820万戸と過去最多となりました(2018年度の統計は調査中/2018年11月28日現在)。これは、全国の住宅戸数の13.5%を占めており、今後もその数は増え続けると予想されています。
空家を解体しない理由としては、思い入れのある建物を壊したくないという心理が働くほか、土地建物に毎年かかる固定資産税や都市計画税は、更地にするより実際には住んでいなくても居住用の建物が建っている方が安くなるというメリットがあることが挙げられます。また、多くの空家は、居住利用の予定がない、また賃貸で収益が出ていない建物に手間やコストはかけたくないという思いから、年々腐朽や破損が進行したまま放置されていくものが数多くあります。
放置された空家に起こりうる問題
空家を放置することで、以下のような問題が起こる可能性があります。
■建物の老朽化
・湿気や雨風の侵入による、カビの増殖や木の腐敗
・木材が湿ることによる、害虫の発生
■近隣トラブル
・隣地への庭木の侵食
・不審火の発生
■不法侵入や不法投棄のリスク
・浮浪者の住みつきや、犯罪での利用
・ゴミの投棄
政府の対策
国は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用を促進するために「空家等対策の推進に関する特別措置法」を2015年に施行しました。これにより、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態として「特定空家」に指定されると、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。
加えて、2016年には空家の発生を抑制するための特例措置として、相続した空家を売却した場合に家屋または土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除する「空家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用となりました。この特例を受けるには、家屋が相続の開始直前において被相続人の居住用として使用されていたことや、売却代金が1億円以下であるなど、一定の条件を満たす必要があります。
また、空家条例を制定している自治体も多く、市町村における空家対策の取組みは着実に拡大しています。